宮部みゆき『杉村三郎』シリーズの読む順番|全5作と番外編、3作目が分かれ目

明るい事務所のデスクに置かれた手帳と万年筆、観葉植物
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宮部みゆきの杉村三郎シリーズは、大企業グループの広報室に勤める”婿”の杉村三郎が、頼まれごとをきっかけに事件へ巻き込まれていく連作です。シリーズ累計は300万部を超えています。

全5作+番外編1本。この記事では刊行順の一覧と、順番を崩すと損をする箇所が1つだけあることを整理します。筆者が読んだのは2作(『誰か Somebody』・『ペテロの葬列』)で、未読の巻は表に明記しています。

目次

杉村三郎シリーズの読む順番(全5作+番外編)

刊行順に読んでください。各巻の事件は独立していますが、杉村の家庭と職場の事情が巻をまたいで動くため、順番を崩すと「本来あとで知るはずのこと」を先に知ってしまいます。とくに3作目と4作目の間は、下で説明する理由で入れ替えないほうがいいです。

順番タイトル備考
1『誰か Somebody』
2003年11月・実業之日本社/長編
シリーズの起点。今多コンツェルン広報室に勤める杉村が、義父の運転手の死をきっかけに調べ事を引き受ける。
読了
2『名もなき毒』
2006年8月・幻冬舎/長編
吉川英治文学賞受賞作。杉村の「巻き込まれ体質」がはっきり形になる巻。
3『ペテロの葬列』
2013年12月・集英社/長編
690ページの大作。この巻の結末が、4作目以降の前提になります。
読了
4『希望荘』
2016年6月・小学館/短編集
杉村は私立探偵として登場。ここから形式も短編集に変わります。
5『昨日がなければ明日もない』
2018年11月・文藝春秋/短編集
現時点の最新刊。探偵・杉村の依頼仕事を3編で描く。
番外編『負の方程式』
『ソロモンの偽証』文庫版・第III部 法廷 下巻に収録
番外編の短編。本編の並びには影響しないので、読みたくなったときで構いません。
刊行順=物語の時系列順です。「読了」は当ブログの管理人が実際に読んだ巻です。

★3作目と4作目の間で、主人公の立場が変わる

このシリーズは前半3作と後半2作で、杉村の状況がまったく違います。前半(『誰か』『名もなき毒』『ペテロの葬列』)の杉村は、今多コンツェルンの会長を義父に持つ広報室の社員です。後半(『希望荘』『昨日がなければ明日もない』)では、会社を辞め、離婚し、私立探偵として仕事を受けている杉村になっています。

その転機を描くのが3作目『ペテロの葬列』です。4作目から読むと「なぜ探偵になったのか」の理由がごっそり抜けますし、逆に3作目まで読んでから4作目に進むと、短編の一つひとつが前半の余韻の上に乗ります。順番を守る意味がいちばん大きいのがここです。

形式も変わります。前半3作は長編、後半2作は短編集です。「厚い本が続いてつらい」と感じたら、後半は短編なので読み口が軽くなる、と知っておくと気が楽です。

番外編『負の方程式』はどこで読むか

『負の方程式』は『ソロモンの偽証』の文庫版(第III部 法廷・下巻)に収録された短編で、杉村が登場します。本編の並びとは独立しているので、5作を読み終えてから、あるいは『ソロモンの偽証』を読むついでにで問題ありません。これを目当てに『ソロモンの偽証』を買う必要はないと思います。

どこから読むか|2作読んだ立場からの答え

迷う余地はありません。1作目『誰か』からです。シリーズの前提になる杉村の立場(婿であること、義父との距離感)がここで提示されます。

正直に書いておくと、筆者が読んだのは『誰か』と『ペテロの葬列』の2作です。2作目『名もなき毒』を飛ばして3作目に進んでしまいましたが、3作目単体でも話は追えました。ただし義父や職場の人間関係の重みは、2作目を挟んだほうが確実に効いていたはずで、これは順番どおりに読まなかった側の反省です。

2作に共通して残ったのは、「巻き込まれていく杉村に同情してしまう」という感覚でした。杉村は探偵らしい探偵ではなく、頼まれると断れない”いい人”です。その人の良さが、事件の側から見ると付け込まれる隙になる。この構図が1作目からすでにあって、3作目では規模が大きくなって返ってきます。

『ペテロの葬列』は690ページあります。長さに構えるより、「この巻で杉村の人生が動く」と知ったうえで読むほうが、終盤の重さを受け止めやすいです。

音声で聴くなら

筆者は『ペテロの葬列』をAudibleで聴きました。ナレーターは井上悟さん、再生時間は15時間9分です。杉村の一人称で進む語りなので、朗読との相性はかなり良いと感じました。義父との会話や、関係者への聞き取りの場面は、声で聴くと温度差がそのまま伝わってきます。

Audibleの作品ページによると、『誰か』『名もなき毒』『昨日がなければ明日もない』も井上悟さんの朗読です。同じ声でシリーズを通せるのは、音声で追う場合の利点です。
※配信や聴き放題の対象は時期で変わります。聴く前に各作品ページで確認してください。

完結しているのか、続きは出るのか

最新刊は2018年11月の『昨日がなければ明日もない』で、2026年9月時点で、その後の新作は出ていません。一方で、作者や版元から「完結」の告知が出たわけでもありません。「終わったのか」と検索する人が多い理由はここにあります。現状は「5作で止まっているが、閉じたとは言われていない」が正確です。

ドラマ版について

シリーズは2度、TBSの「月曜ミステリーシアター」枠でドラマ化されています。主演はどちらも小泉孝太郎さんです。

1度目は2013年7月〜9月の『名もなき毒』で、原作は『誰か』と『名もなき毒』の2冊分をまとめています。2度目は2014年7月〜9月の『ペテロの葬列』です。

つまりドラマ化されているのは前半3作までで、私立探偵になってからの後半2作は映像化されていません。
※配信状況は時期によって変わるので、視聴前に各サービスで確認してください。

よくある質問

杉村三郎シリーズは何作ありますか?

本編5作と番外編1本です。本編は『誰か』『名もなき毒』『ペテロの葬列』『希望荘』『昨日がなければ明日もない』。番外編『負の方程式』は『ソロモンの偽証』文庫版に収録されています。

順番通りに読まないとダメですか?

各巻の事件は独立していますが、3作目と4作目の間で杉村の立場が大きく変わります。少なくとも『ペテロの葬列』を読んでから『希望荘』に進んでください。

シリーズは完結していますか?

2018年の『昨日がなければ明日もない』以降、新作は出ていません(2026年9月時点)。ただし完結の告知もないため、続くかどうかは分かりません。

ドラマは原作のどこまでですか?

2013年の『名もなき毒』が1・2作目、2014年の『ペテロの葬列』が3作目に対応します。4作目以降は映像化されていません。

Audibleで聴けますか?

本編5作が配信されており、『誰か』『名もなき毒』『ペテロの葬列』『昨日がなければ明日もない』は井上悟さんの朗読です。聴き放題の対象かどうかは時期で変わるので、作品ページで確認してください。

宮部みゆきの他の作品も読むなら

筆者が読んだ2作は、それぞれ別記事にあらすじと感想をまとめています。『誰か Somebody』のあらすじと感想と、『ペテロの葬列』のあらすじと感想です。杉村三郎シリーズ以外の宮部作品は次の記事にまとめています。

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