堂場瞬一は著作が200冊を超え、シリーズだけでも20近くあります。「どのシリーズから入ればいいのか」で止まってしまう作家の代表格です。
この記事では、主要12シリーズを第1作・開始年・作品数で一覧にしたうえで、筆者が実際に第1作を読んだ3シリーズ(警視庁追跡捜査係・警視庁犯罪被害者支援課・日本の警察・昭和編)について、どれから入るかの結論を書きます。全作品を網羅する記事ではありません。
先に結論|迷ったら『交錯』(警視庁追跡捜査係)から
3シリーズの第1作を読んだうえでの答えは、警視庁追跡捜査係シリーズの第1作『交錯』です。理由は3つあります。
①1作ごとに事件が完結するので、途中でやめても損をしない。②14作まで続いていて、しかも年1冊ペースで現在も新刊が出ているので、気に入ったあとの「次」に困らない。③2023年にドラマ化されており、映像から入る手もある。
逆に、時代小説の空気が好きなら『焦土の刑事』から、「刑事が捜査しない警察小説」という変化球が読みたいなら『壊れる心』から、が筆者の答えです。それぞれ下で理由を書きます。
堂場瞬一の主要12シリーズ一覧(第1作と作品数)
まず全体像です。どのシリーズも刊行順に読めば問題ありません。堂場作品は同じ世界観で人物が行き来することがありますが、シリーズをまたぐ順番を気にする必要はなく、入ったシリーズを1作目から順に追えば十分です。
| シリーズ(第1作・開始年・作品数) | 備考 |
|---|---|
| 警視庁追跡捜査係 『交錯』 2010年・ハルキ文庫/14作 | 難事件専門の2人組。1作ごとに完結し、現在も年1冊ペースで続く 第1作を読了 |
| 警視庁犯罪被害者支援課 『壊れる心』 2014年・講談社/8作 | 捜査ではなく被害者のケアを担う部署が主役。切り口が珍しい 第1作を読了 |
| 日本の警察・昭和編(昭和の刑事) 『焦土の刑事』 2018年・講談社/3作 | 戦前から戦後の東京が舞台。時代小説としても読める 第1作を読了 |
| 刑事・鳴沢了 『雪虫』 2001年・中央公論新社/本編10作+番外1 | 著者最初のシリーズ。新装版が2020年に出ている |
| ラストライン 『ラストライン』 2018年・文春文庫/8作+Ø巻 | 定年間近のベテラン刑事。文庫オリジナルで、毎年3月に新刊 |
| 警視庁失踪課・高城賢吾 『蝕罪』 2009年・中公文庫/10作 | 失踪事件だけを扱う部署。完結済みで一気読みしやすい |
| アナザーフェイス 『アナザーフェイス』 2010年・文春文庫/9作+番外1 | — |
| チーム 『チーム』 2008年・実業之日本社/4作 | 警察ものではなく駅伝を描くスポーツ小説 |
| 捜査一課・澤村慶司 『逸脱』 2010年・角川書店/3作 | — |
| 警視庁総合支援課 『聖刻』 2021年・講談社/6作(0〜5巻) | 犯罪被害者支援課の続き(シーズン2)。主人公が交代 |
| ボーダーズ 『ボーダーズ』 2021年・集英社文庫/5作 | 毎年12月に新刊 |
| 刑事の挑戦・一之瀬拓真 『ルーキー』 2014年・中公文庫/6作 | — |
※作品数は今後も増えます。とくにラストライン(毎年3月)と追跡捜査係(毎年1月前後)は刊行ペースが安定しているので、最新刊は版元ページで確認してください。
実際に第1作を読んだ3シリーズ
警視庁追跡捜査係『交錯』|「正義とは何か」を考えさせる入口
性格が正反対の刑事2人が、未解決事件を追う部署に置かれる話です。読み終えて残ったのは事件の真相より、「正義とは何か」を考えさせられる後味でした。派手なアクションより、捜査の手順と人間関係で読ませるタイプなので、警察小説を初めて読む人にも入りやすいと思います。
刊行順に並べると次の14作です(ハルキ文庫)。
| 巻 | 書名 | 刊行 |
|---|---|---|
| 1 | 『交錯』 | 2010年1月 |
| 2 | 『策謀』 | 2011年1月 |
| 3 | 『謀略』 | 2012年1月 |
| 4 | 『標的の男』 | 2013年1月 |
| 5 | 『刑事の絆』 | 2013年12月 |
| 6 | 『暗い穴』 | 2015年9月 |
| 7 | 『報い』 | 2017年2月 |
| 8 | 『脅迫者』 | 2018年7月 |
| 9 | 『垂れ込み』 | 2020年1月 |
| 10 | 『時効の果て』 | 2021年1月 |
| 11 | 『不可能な過去』 | 2023年1月 |
| 12 | 『陰からの一撃』 | 2024年1月 |
| 13 | 『全悪』 | 2025年1月 |
| 14 | 『欲望の裏』 | 2026年1月 |
最初の1冊の選び方やAudible版の有無は警視庁追跡捜査係シリーズの読む順番に分けてまとめています。『交錯』単体の感想は『交錯』のあらすじと感想です。
警視庁犯罪被害者支援課『壊れる心』|捜査しない警察小説
主人公は犯人を追う刑事ではなく、被害者の側に立って支える部署の職員です。読んだときの正直な感想は「切り口が斬新」の一言で、同じ警察を舞台にしていても、追跡捜査係とはまったく違う場所から事件を見ることになります。「警察小説は読み飽きた」という人にこそ向いています。
刊行順は次の8作です(講談社文庫)。4作目は上下2冊です。8作目『チェンジ』でシーズン1が終わり、後述の「警視庁総合支援課」に続きます。
| 巻 | 書名 | 刊行 |
|---|---|---|
| 1 | 『壊れる心』 | 2014年8月 |
| 2 | 『邪心』 | 2015年10月 |
| 3 | 『二度泣いた少女』 | 2016年8月 |
| 4 | 『身代わりの空(上・下)』 | 2017年8月 |
| 5 | 『影の守護者』 | 2018年8月 |
| 6 | 『不信の鎖』 | 2019年8月 |
| 7 | 『空白の家族』 | 2020年8月 |
| 8 | 『チェンジ』 | 2021年8月 |
『壊れる心』のあらすじと感想に詳しく書いています。
日本の警察・昭和編『焦土の刑事』|時代小説として読める
舞台は戦前から戦後すぐの東京です。当時の街の情景が浮かんで、時代をさかのぼったような感覚で読めました。刑事ものとしてより、歴史小説として惹かれる人のほうが合うかもしれません。全3作で完結しているので、区切りがいいのも利点です。
『焦土の刑事』のあらすじと感想にまとめています。
需要の大きい他の5シリーズ|未読なので順番と事実だけ
以下の5シリーズは筆者が未読です。検索されることの多いシリーズなので、順番と事実だけを整理しておきます。感想は書きません。
刑事・鳴沢了|著者最初のシリーズ(本編10作+番外1)
第1作『雪虫』(2001年)から始まる、堂場瞬一が最初にシリーズ化した作品群です。読む順番は刊行順で、雪虫→破弾→熱欲→孤狼→帰郷→讐雨→血烙→被匿→疑装→久遠、番外編が『七つの証言』。2020年に本編全10巻と番外編の新装版が中公文庫から出ています。
ラストライン|定年間近の刑事(8作+Ø巻)
第1作『ラストライン』(2018年・文春文庫)から始まる文庫オリジナルのシリーズです。2019年以降は毎年3月に新刊が出るのが特徴で、2026年3月の『南の罠 ラストライン8』が最新です。前日譚として『灰色の階段 ラストラインØ』(2023年)もあり、これは本編を読んだあとで構いません。
| 巻 | 書名 | 刊行 |
|---|---|---|
| 1 | 『ラストライン』 | 2018年11月 |
| 2 | 『割れた誇り』 | 2019年3月 |
| 3 | 『迷路の始まり』 | 2020年3月 |
| 4 | 『骨を追え』 | 2021年3月 |
| 5 | 『悪の包囲』 | 2022年3月 |
| Ø | 『灰色の階段』 | 2023年3月 |
| 6 | 『罪の年輪』 | 2024年3月 |
| 7 | 『英雄の悲鳴』 | 2025年3月 |
| 8 | 『南の罠』 | 2026年3月 |
4作目『骨を追え』は犯罪被害者支援課とのコラボ作で、支援課の村野秋生が登場します。Ø巻『灰色の階段』は前日譚の短編集です。
警視庁失踪課・高城賢吾|完結済み(全10作)
第1作『蝕罪』(2009年・中公文庫)から全10作で完結しています。終わりが見えているシリーズを一気に読みたい人に向いています。
| 巻 | 書名 | 刊行 |
|---|---|---|
| 1 | 『蝕罪』 | 2009年2月 |
| 2 | 『相剋』 | 2009年4月 |
| 3 | 『邂逅』 | 2009年8月 |
| 4 | 『漂泊』 | 2010年2月 |
| 5 | 『裂壊』 | 2010年6月 |
| 6 | 『波紋』 | 2011年2月 |
| 7 | 『遮断』 | 2011年10月 |
| 8 | 『牽制』 | 2012年12月 |
| 9 | 『闇夜』 | 2013年3月 |
| 10 | 『献心』 | 2013年6月 |
警視庁総合支援課|犯罪被害者支援課の続き(6作)
警視庁犯罪被害者支援課の続きにあたるシリーズで、版元の紹介では「シーズン2」とされています。支援課が「総合支援課」に改められ、主人公は柿谷晶に代わります。シーズン1の主人公・村野秋生も、0巻の『聖刻』に登場します。
『聖刻』は2021年に単行本で出て、2024年に「警視庁総合支援課0」の副題をつけて文庫化されました。1巻以降は講談社文庫の書き下ろしで、毎年8月に新刊が出ています。
| 巻 | 書名 | 刊行 |
|---|---|---|
| 0 | 『聖刻』 | 2021年8月(単行本) |
| 1 | 『誤ちの絆』 | 2022年8月 |
| 2 | 『最後の光』 | 2023年8月 |
| 3 | 『昨日への誓い』 | 2024年8月 |
| 4 | 『拒絶の理由』 | 2025年8月 |
| 5 | 『守るべきもの』 | 2026年8月 |
ボーダーズ|警視庁SCU(特殊事件対策班)の5人(全5作)
警視総監直属の「SCU(特殊事件対策班)」が、ひとつの部署では対応しきれない「境界線上」の事件を捜査するシリーズです。メンバーは捜査一課・交通捜査課・生活経済課・組織犯罪対策課・公安一課などの出身で、キャップは結城。巻ごとに中心になるメンバーが替わり、1作目は八神、2作目は最上、3作目は朝比奈由宇、4作目は綿谷亮介、5作目はキャップの結城が10年追い続けた事件の話です(集英社文庫の各巻の紹介より)。
第1作『ボーダーズ』(2021年12月・集英社文庫)から毎年12月に1作ずつ出ていて、2026年10月時点で5作です。2026年10月16日からは、テレビ東京のドラマ9『ボーダーズ 警視庁特殊事件対策班』(毎週金曜夜9時・主演 沢村一樹さん)として放送されています。番組サイトによると、ドラマは原作の5巻をもとに、回ごとに5人それぞれが中心になる構成です。
| 巻 | 書名 | 刊行 |
|---|---|---|
| 1 | 『ボーダーズ』 | 2021年12月 |
| 2 | 『夢の終幕』 | 2022年12月 |
| 3 | 『野心』 | 2023年12月 |
| 4 | 『初心の業』 | 2024年12月 |
| 5 | 『怨嗟の回廊』 | 2025年12月 |
※各シリーズの巻と刊行年月は、版元(角川春樹事務所・講談社・文藝春秋・中央公論新社・集英社)の書誌と国立国会図書館サーチで確認しました(2026年10月時点)。
シリーズをまたぐ楽しみ
堂場作品は、鳴沢了・高城賢吾・追跡捜査係・アナザーフェイスなどが同じ世界観でつながっていて、別シリーズの刑事が顔を出すことがあります。『骨を追え』のように、複数シリーズの刑事が同じ事件に関わる作品もあります。ただしこれは「知っていると嬉しい」程度のもので、順番を気にする理由にはなりません。入ったシリーズを順に読み、余裕が出たら隣のシリーズへ、で十分です。
シリーズ外を1冊で読むなら
筆者が読んだシリーズ外の1冊は『over the edge』(2012年・早川書房)です。東京で起きた失踪事件を、ニューヨーク市警の刑事と日本の元刑事が追うハードボイルドで、反りが合わない2人が少しずつ信頼し合っていく過程が読みどころでした。Audible版はナレーターが井出翔大さんで14時間52分。『over the edge』のあらすじと感想に書いています。
よくある質問
堂場瞬一のシリーズはどれから読めばいいですか?
迷ったら警視庁追跡捜査係の第1作『交錯』です。1作ごとに完結し、14作まで続いていて、ドラマ化もされています。
シリーズをまたいで読む順番はありますか?
ありません。同じ世界観で人物が行き来することはありますが、各シリーズを1作目から順に読めば問題ありません。
完結しているシリーズはどれですか?
警視庁失踪課・高城賢吾(全10作)、日本の警察・昭和編(全3作)、刑事・鳴沢了(本編10作+番外1)などです。追跡捜査係・ラストライン・総合支援課・ボーダーズは現在も続いています。犯罪被害者支援課は8作でシーズン1が終わり、総合支援課に続いています。
追跡捜査係シリーズの最新刊は?
2026年1月刊行の『欲望の裏』で第14作です。年1冊ペースで続いています。
堂場瞬一の各シリーズの最新刊は?
2026年10月時点の最新刊は、追跡捜査係が『欲望の裏』(2026年1月)、ラストラインが『南の罠』(2026年3月)、総合支援課が『守るべきもの』(2026年8月)、ボーダーズが『怨嗟の回廊』(2025年12月)です。シリーズの外では、主要シリーズの登場人物がそろう25周年記念の書き下ろし『鋼鉄のレガシー』(講談社・2026年7月)も出ています。
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