中山七里の岬洋介シリーズは、ピアニストの岬洋介が音楽にまつわる事件に関わっていくミステリです。
デビュー作『さよならドビュッシー』から始まり、2025年11月に出た最新刊『とどけチャイコフスキー』まで続いています。この記事では刊行順の一覧と、番外編をどこで読むかを整理します。
原作『さよならドビュッシー』は「このミステリーがすごい!」大賞の第8回受賞作で、デビュー作がそのままシリーズの起点になったという成り立ちです。
※「全9作」と紹介されることが多いのですが、版元は『とどけチャイコフスキー』をシリーズ10作目としています。番外編を数に含めるかどうかの違いです。
岬洋介シリーズの読む順番
刊行順に読むのがおすすめです。巻によって岬の高校時代や司法修習生時代にさかのぼるため、時系列は前後します。ただし刊行順に読むと、その「さかのぼり」自体が仕掛けとして効く作りになっています。
| タイトル(刊行順) | 備考 |
|---|---|
| 1. 『さよならドビュッシー』 単行本 2010年1月/文庫 2011年1月 | シリーズの起点であり、中山七里のデビュー作。まずここから。 聴了 |
| 2. 『おやすみラフマニノフ』 単行本 2010年10月/文庫 2011年9月 | 同じ音大を舞台にした2作目。岬の立ち位置が見えてくる。 |
| 3. 『いつまでもショパン』 単行本 2013年1月/文庫 2014年1月 | 舞台がポーランドへ移る。国際コンクールが背景。 |
| 4. 『どこかでベートーヴェン』 単行本 2016年5月/文庫 2017年5月 | 岬の高校時代にさかのぼる巻。 |
| 5. 『もういちどベートーヴェン』 単行本 2019年3月/文庫 2020年4月 | 岬が司法修習生だった時期を描く。 |
| 6. 『合唱 岬洋介の帰還』 単行本 2020年4月/文庫 2021年6月 | タイトルの通り、岬が戻ってくる巻。 |
| 7. 『おわかれはモーツァルト』 単行本 2021年12月/文庫 2023年12月 | 2016年11月が舞台。盲目のピアニスト榊場隆平に殺人の疑いがかかり、岬が助けに来る。 |
| 8. 『いまこそガーシュウィン』 単行本 2023年9月/文庫 2025年8月 | 大統領選のあと差別が激しくなったアメリカが舞台。共演の裏で、大統領の暗殺計画が動く。 |
| 9. 『とどけチャイコフスキー』 単行本 2025年11月(文庫は未刊) | 2025年11月7日刊行の最新刊。舞台はモスクワ。 |
| 番外編 『さよならドビュッシー前奏曲 要介護探偵の事件簿』 単行本『要介護探偵の事件簿』2011年10月/文庫で改題 2012年5月 | 番外編。『さよならドビュッシー』の前日譚にあたるので、1作目のあとに読むと世界が広がります。先に読んでも支障はありません。 |
番外編はどこで読むか
『さよならドビュッシー前奏曲 要介護探偵の事件簿』は、『さよならドビュッシー』に出てくる要介護探偵こと香月玄太郎を主役にした番外編です。1作目を読んだあとに挟むと、同じ舞台を別の角度から見ることになります。本編を追うだけなら飛ばしても支障はありません。
単行本は『要介護探偵の事件簿』(2011年10月)の書名で出て、文庫化(2012年5月)のときに今の書名に改められました。版元は文庫版を「『さよならドビュッシー』のエピソード・ゼロ」と紹介しています。
最新刊は『とどけチャイコフスキー』(2025年11月7日)
舞台はモスクワ。音楽院で起きた事件を追いながら、岬自身のルーツにも触れる巻とされています。シリーズは累計190万部を超えました。
※筆者は未読のため、内容には触れません。
どこから読むか|『さよならドビュッシー』一択です
迷う余地はほとんどありません。『さよならドビュッシー』からです。中山七里のデビュー作でもあり、シリーズの起点でもあります。
正直に書いておくと、筆者がAudibleで聴いたのはこの1作だけです(中山七里の作品自体は28冊聴いています)。なので以下は「入口の1冊についての実感」として読んでください。
そのうえで言うと、この1作は音声で聴く価値がとくに高いと感じました。ピアノの演奏シーンが文章で細かく描写されるのですが、朗読で聴くと文字を目で追う手間がないぶん、演奏そのものに集中しているような感覚になります。Audible版のナレーターは呉羽藍依さんです。
逆に、譜面や専門用語が出てくる場面は音声だと流れていきやすいので、気になったところは少し戻して聴き直すのが向いています。
タイトルはすべて作曲家の名前
このシリーズの分かりやすい特徴が、タイトルにクラシックの作曲家名が入っていることです。ドビュッシー、ラフマニノフ、ショパン、ベートーヴェン、モーツァルト、ガーシュウィン、チャイコフスキー。『合唱 岬洋介の帰還』もベートーヴェンの第九を指しています。
作曲家の名前がそのまま巻の中身と結びついているので、「次はどれだったか」を思い出しやすいシリーズでもあります。刊行間隔が空いても、タイトルを見れば読んだかどうかの判断がつきます。
映像化について
第1作『さよならドビュッシー』は、2013年1月26日に映画化されています。監督は利重剛、主演は橋本愛。上映時間は131分です。
注目したいのは岬洋介を演じたのが現役ピアニストの清塚信也さんで、本作が俳優デビューだったこと。ピアニストが探偵役という設定を、実際のピアニストが演じています。
※配信状況は時期によって変わるので、視聴前に各サービスで確認してください。
よくある質問
岬洋介シリーズは何作ありますか?
本編は9作で、これに番外編1作を加えた数え方だと10作になります。版元は最新刊『とどけチャイコフスキー』をシリーズ10作目としています。「全9作」と書かれた紹介は、番外編を数に入れていないためです。
時系列順に読んだほうがいいですか?
刊行順で問題ありません。岬の過去にさかのぼる巻がありますが、刊行順に読むことでその構成が生きるようになっています。
版元の紹介にある時期の手がかりは、番外編が『さよならドビュッシー』のエピソード・ゼロ、『どこかでベートーヴェン』が17歳の岬の最初の事件、『もういちどベートーヴェン』が司法修習生の時期、『おわかれはモーツァルト』が2016年11月です。作中の時系列を公式にまとめた一覧はありません。
『さよならドビュッシー』だけでも楽しめますか?
1作で完結しているので単体でも楽しめます。シリーズを追うかどうかは、読み終えてから決めて構いません。
御子柴礼司シリーズとつながりはありますか?
中山七里はシリーズをまたいで人物を登場させますが、岬洋介シリーズは単独で読み進められます。先に他のシリーズを読んでいる必要はありません。
岬洋介シリーズは文庫で読めますか?
2026年10月時点で、8作目『いまこそガーシュウィン』(2025年8月)までと番外編が宝島社文庫で出ています。最新刊『とどけチャイコフスキー』は単行本だけです。これまでの巻は、単行本のおよそ1〜2年後に文庫になっています。
岬洋介の父親は?
父親は検事です。宝島社の紹介では、『どこかでベートーヴェン』の文庫版に収められた書き下ろし短編「Concerto コンチェルト 〜協奏曲〜」で、岬が父の岬検事と謎を解くとされています。父親の名前は、版元の紹介には出てきません。
岬洋介にモデルはいますか?
著者が実在のモデルを明かした発言は、版元などの公式な媒体では確認できませんでした(2026年10月時点)。名前については、大学時代に江戸川乱歩賞へ応募した作品の主人公の名前を、デビュー作で再び使ったと著者が語っています(講談社の記事・『IN★POCKET』2013年11月号より)。
中山七里の他のシリーズも読むなら
中山七里には岬洋介シリーズのほかに、御子柴礼司シリーズ・刑事犬養隼人シリーズ・静おばあちゃんシリーズがあります。悪徳弁護士が主役の法廷ものが気になるなら、御子柴礼司シリーズの読む順番にまとめました。全体の見取り図は次の記事にあります。
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